[魔女の宅急便の裏話]ニシンのパイを嫌いな女の子は悪い子ではないという新考察

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ジブリ映画[魔女の宅急便]に登場するニシンのパイが嫌いな少女。

キキが大雨の中打たれ、ずぶ濡れになりながらニシンのパイ届けるも

届け先の少女は「私このパイ嫌いなのよね」とだけ言い残したことでお馴染みで、劇中数秒の登場なのにも関わらず「ニシンのパイが嫌いな女の子」として不思議と覚えてしまっています。

子供の頃このシーンを見た時はジジの「今の本当にあの人の孫?」というセリフもあってか、キキに感情移入していると「なんか嫌な女の子だったなぁ」と印象が残った人が多いと思います。

しかし、大人になってから視点を変えてこのシーンを振り返ってみると、このニシンパイの女の子はただただ普通だったんだと気づかされます。

【魔女の宅急便】何回も擦られている宮崎監督の意図

宮崎監督の著書[出発点]でもニシンパイが嫌いな女の子の役割について語られています。

キキがニシンのパイを届けても特に女の子から感謝されるわけでもなく、冷たくあしらわれてしまう訳ですが、このシーンは新人の宅配業者として洗礼を受ける大事な場面だと駿監督は言います。

「世の中優しい人ばかりではなく、仕事でも理不尽に見舞われることがある」とキキが身をもって経験して成長に繋がる、そういったシーンとして描かれています。

宮崎駿:
老婦人のパイを届けたときに、女の子から冷たくあしらわれてしまうわけですけど、宅急便の仕事をするというのは、ああいう目にあうことなんですから。特にひどい目にあったわけじゃあなくてね、ああいうことを経験するのが仕事なんです。
僕はそう思いますし、キキはあそこで自分の甘さを思い知らされたんです。当然、感謝してくれるだろうと思い込んでいたのが……。違うんですよ。お金をもらったから運ばなきゃいけないんです。もし、そこでいい人に出会えたなら、それは幸せなことだと思わなくちゃ……。別に、映画ではそこまでは言ってませんけどね(笑)。

僕らだって宅急便のおじさんが来たときに「大変ですねぇ、まあ上がってお茶でもどうぞ」なんて、いちいち言わないじゃないですか(笑)。ハンコをわたして、どうもご苦労さん、それで終わりでしょ。

――でも、女の子の宅急便やさんなら、違うと思いますけど。

宮崎駿:
いやぁ、同じですよ。だから、僕はあのパーティの女の子が出てきたときのしゃべり方が気に入ってますけどね。あれは嘘をついていない、正直な言い方ですよ。本当にいやなんですよ、要らないっていうのに、またおばあちゃんが料理を送ってきて、みたいな。ああいうことは世間にはよくあることでしょ。
それはあの場合、キキにとってはショッキングで、すごくダメージになることかもしれないけど、そうやって呑み下していかなければいけないことも、この世の中にはいっぱいあるわけですから。

「あたし、このパイきらいなのよね」の少女に宮崎駿が思うこと より

孫娘の立場に立ってみれば、彼女はただ普通に宅急便に対応しているだけですし、ニシンのパイに対しての悪気無く出た正直な感想を言ったりする気持ちもわかります。

キキがパイを届けた時に「だからいらないって言ったのに~」という孫娘のセリフから、

孫娘はおばあちゃんにニシンのパイはいらないとあらかじめいらないと伝えているのに、それでもパイを送ってくるおばあちゃんはよく老害と言われるのを見かけます。(おばあちゃんが良かれと思ってやったことが空回っただけですが)

おばあちゃんは小さい時の孫娘がニシンのパイを食べて「美味しい」とウケたのに味を占めて、悪気無く同じようなパターンで喜ばせようとするパターンでよくある話で、あたしンちにも似たようなエピソードがあります。

あたしンち

116話 タチバナ家のお中元

小林さんにお中元の事で文句が言えない話。
小林さんのお中元は毎年同じもの、それもユズいわく歯がとける程甘いゼリー、はじめて食べた時はあまりのまずさに全員沈黙。
そんなゼリーだったが、(子供の名前がみかん、ユズヒコなので)みかんゼリーとユズゼリーというシャレた名前だったため、母が食べる前から子供達が大喜びとお礼を言ってしまった、その結果毎年届く事に。

あたしンち 116話 タチバナ家のお中元/117話 みかん、水着買うっ あらすじ・感想 より

普段の誰かへの祝いでプレゼントする機会がありますが、残酷なことにプレゼントを貰っても嬉しくなくありがた迷惑になることもあり、「喜ぶと思ってプレゼントしたものが、時には相手側にとって迷惑でしかないこともある」というメッセージ性がニシンパイのシーンにはあると思います。

その「貰っても嬉しくないモノ」の極端の例としてニシンのパイが選ばれたのではないでしょうか。

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ニシンのパイはヨーロッパの美味しくない料理だったの?

魔女の宅急便のニシンのパイこの魚のパイは実在するイギリスの家庭料理で、ヨーロッパのまず飯と言われています。

子供の頃はキキがパイを焼き上げるシーンを見て「なんかよくわからないけどうまそう!」という感想を抱きますが、大人になるとニシンのパイは魚とカボチャを入れたパイだと知って割と残念な料理だと気づきます。

カボチャとニシンのパイを海原雄山に届けたらブチ切れてその場でゴミ箱に捨てて見せると思います。

大人でも食べたがる人は少ないのに年頃の女性が好んで食べる料理じゃなくないですか?それにおばあちゃんがニシンの骨を取り除かないまま焼いているのだしたら相当ヤバいおばあちゃんかもしれません。

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[魔女の宅急便の新考察]ニシンのパイが嫌いな女の子は良い子でも無いが悪い子でもない

孫娘がおばあちゃんに「ニシンのパイはいらない」と事前に伝えているにも関わらず、自分と同じ年代の女の子を豪雨の中ずぶ濡れにさせてまで、いらない物を届けさせてしまったことにおばあちゃんに苛立ちを覚えていたという見方もされています。

amazonや楽天で注文した商品がたまたま台風や豪雨の日に届けてくれた日には申し訳無い気持ちになりますが、感謝の言葉は伝えるにしても特にそれ以上のことをする訳でも無いのがほとんどだと思います。

普通なら宅配業者に気を使うかもしれませんが、彼女はまだ子供なので仕方が無いところはあります。要するに孫娘は普通の客の普通な反応をしただけなんですよね。

ニシンのパイが嫌いな女の子は長い間擦られた話題ですが、この視点で見られるのはかなりめずらしいなと思いました。何年経っても新たな解釈が出てくる作品って改めていいなと

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